先日、現地で活躍されているフードアナリストの友人から、アメリカにおける植物性由来の代替ミルク(主にヨーグルト)の市場について、ヘルシー料理研究家としてレポートを書いて欲しいという依頼を受けました。日本の某乳製品会社から受けたお仕事の一環という事でした。 それで、以下のようなレポートを書かせて頂きました。現地で人気商品の詳細をお伝えする事が、実際に商品開発する上で参考になるかと思い、注目を集めている商品をレポートさせて頂きました。折角なので、記録としてブログに残しておきたいと思います。多少、訂正してありますが、ご興味のある方は、ご覧下さい。今後も、植物性由来の代替ミルク製品の展開を温かく見守って行きたいと思います。 ーーーーーーーーーーーーーーーー ここ数年来、米国、イギリスを筆頭に、健康志向、環境問題、動物愛護等の理由を背景に、動物性食品を減らし、植物性食品を積極的に摂ろうという大きなムーブメントが始まっています。2020年1月にスイスで開催された、国際経済フォーラムのダボス会議では、約3000人の各国首脳、政治家、CEO、有識者、著名人達に、肉食排除の菜食料理が提供され大きな話題になりました。 https://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2020/01/260828_1.php?fbclid=IwAR1Pv7mOD8s3fJhQ7_L6vjkSZetuQIjMbpqYbMr2ERNITptpvtWr2Q_jiF4 アメリカでは、長年続いてきた祭典、ゴールデングローブ賞に続き、第92回アカデミー賞でも、オスカーの昼食で70%プラントベースのメニューを提供しました。アカデミー賞では過去10年間、二酸化炭素排出量の削減に取り組んできまており、過去7年オスカーのショーにはゼロカーボンを成し遂げており、持続可能性計画を立てています。 https://www.livekindly.co/oscars-academy-awards-vegan/?fbclid=IwAR0osn-ufif4KdwIKllxgIJ17BGetb_y_gZ0KnOjfH4bEqzAV-FSFojfjMg 大手企業スターバックスの、ケビン・ジョンソン最高経営責任者(CEO)は生産面で乳製品より環境に優しいアーモンドやココナッツ、大豆、オーツ麦から作ったミルクを選ぶように消費者を促す方針を打っており、北米では同社顧客の15~20%が既にそうした選択をしています。また、持続可能性を高めるための取り組みの一環として、今年、アメリカ、カナダにて、プラントベースの朝食をローンチすると発表しました。 n1.htmhttps://www.plantbasednews.org/lifestyle/starbucks-to-launch-plant-based-breakfast-patty-in-us-and-canada?utm_content=bufferbaf3e&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer&fbclid=IwAR0RG8Ao3fAjh3PCWKnfpmMPkDEcK3qvWApQ1cn_H1ttALJYL64gJAW0tQA 調査会社のミンテルによると牛乳の売り上げは2015年から7パーセント減少し、さらに2020年までに11パーセント減少するという予測が出ています。その一方で、植物性由来のミルクの売り上げは、過去5年間で着実に伸びており、2012年以降は、61%の売り上げを伸ばしており、2017年には21億1,000万ドルに達すると推定されました。この調査によると、植物性由来のミルクの市場占有率は、アーモンドミルクが、64%、豆乳が13%、ココナッツミルクが、12%となっています。然し、消費者が代替ミルクのレパートリーの多様化を求め続けている為、新しい植物性由来のミルクの探究、製造も、日夜続けられています。 そして、今、最も大きな注目を浴びている植物性由来のミルクが、オーツ麦から作られている、オートミルクです。オートミルクは糖質が少なく、大豆、ナッツアレルギーの心配もなく、食物繊維が豊富で、様々な薬効成分もある事から、ビーガンの人達以外の人々からも沢山の指示を得ています。中でも、2年前に、スエーデンから進出してきた、「OATLY(オートリー)」は、ニューヨークで火が付き、スーパーなどで売切れ状態が続いていることを米新聞のウォールストリートジャーナルが掲載して以降、全国的に消費者が増えました。 大手企業、ホールフーズ社に調査に出向いたところ、様々なサイズのものが陳列されていました。棚卸をしていたスタッフに、人気の植物性由来のミルクを聞いてみたところ、この「OATLY(オートリー)」を勧められました。実際、「OATLY(オートリー)」は、売れ過ぎて供給が追いつかなくなっており、供給不足を解消するため「ニュージャージー州に1,000万ドル(日本円で約11億円)をかけて工場の建設を計画しました。 https://erizo-plusalpha-life.com/アメリカで売切れ続出のオートミルク オートミルクの優れた特質は以下の通りです。 ●牛乳よりも消化がよい ●100%植物由来 ●超内フローラ整えてくれる食物繊維を豊富に含んでいる ●抗酸化成分を多く含んでいる ●飽和脂肪が少ない ●血糖値をコントロールする 大塚製薬によると、大麦β-グルカンのパワーは、朝食後、昼食後の血糖値の上昇を抑えるだけでなく、1日の糖質や食生活をコントロールすることができ、大麦β-グルカンを含む食事を摂ると、食後の糖質の吸収が53%抑制されることが報告されているそうです。 オートミルクの栄養価(参考までに、『Pacific Foods』社のオールミルク(プレーン)1カップの成分は以下の通り。) ●カロリー:130kcal ●脂質:2.5g ●飽和脂肪:0g ●タンパク質:4g ●糖質:24g ●糖類:19g ●食物繊維:1.9g ●ナトリウム:115mg 1カップで、1日に必要なカルシウムの約35%と鉄分の約10%が摂取可能。(但し、これらの数字はミルクの強化内容によって異なる)又、オートミルクには、牛乳に含まれる飽和脂肪とは違う“心臓にやさしい植物油”も少量含まれているのが特徴的。又、大豆やナッツのようなアレルギー源が含まれていないので、食品アレルギーがある人にとってはありがたい代替オプション。尚、オーツ麦はグルテンフリーと言われていますが、セリアック病やグルテン不耐症の人は、成分表をチェックする事が必要不可欠。 公認管理栄養士のサンドラ・グラントによると、一般的にオートミルクは、他の代替ミルクに比べて1カップあたりのナトリウム含有量が少ないそうです。豆乳には1カップあたり124mg、アーモンドミルクには1カップあたり186mgのナトリウムが含まれていますが、オーツミルクには115mg。ドッドによれば、オートミルクには1カップで2gと食物繊維も多く含まれています。一方、豆乳では1.5g、牛乳とアーモンドミルクには含まれていません。タンパク質は牛乳よりも少なく、1カップで1~4g程度です。牛乳からは1カップで約8gのタンパク質が摂取可能です。 また、オートミルクから作られた、ヨーグルトも、人気を上げてきています。これまでは、アーモンド、豆乳、ココナッツミルクから作られたヨーグルトが定番でしたが、ナッツ、豆アレルギーのある人でも、食物繊維が豊富なオートミルクから作られたヨーグルトは、安心して食べられます。 私も、料理人として、大きなイベントの食事を作る依頼を受けた時は、アレルギーのある方でも安心して食べられる、植物性由来のミルク、ヨーグルトとして、オート麦から作られた、オートミルク、ヨーグルトを使っています。使い方は、植物性由来で作った手作りのカレールーに入れたり、ドライマンゴーとヨーグルトをブレンダーにかけて、マンゴーヨーグルトのデザートを作ったりします。オートミルクが市場に出る前は、ココナッツミルクを使っていたのですが、ココナッツミルクは、独特の風味が強過ぎる事もあり、水で薄めたり、自家製の甘酒とブレンドするなどの工夫が必要でした。その点、オートミルクは、風味が強過ぎないので、使い易いという特徴があります。ただ、商品によっては、添加物や甘味料が含有されているのも多くあるので、購入前に必ず、原材料を確認します。 個人的によく使うオートミルクで作られたヨーグルトは、オレゴンにある、Nancy's 社という会社のプレーンタイプです。その他にも、サトウキビで甘みをつけた以下の種類ががあります。 ●バニラ ●ストロベリーハイビスカス ●アップルシナモン ●パッションフルーツ https://nancysyogurt.com/products/oatmilk-non-dairy-yogurt/ Nancy'社は、60年代に牛乳瓶を、地元の学校に配達する、家族経営のクレーマリーという小さなお店から始まりました。その後、経理の一員として、ナンシーハムレンさんがスタッフに加わった事により、大きな転機が訪れます。ナンシーさんは、彼女の祖母から教わった昔からの方法で作る、手作りヨーグルトの技術をクレーマリーのオーナーのチャックさんに教えました。そしてそのヨーグルトが、ナンシーさんのヨーグルト(Nancy's Yourgurt)として、地域の話題となり、アメリカ全土に販売されるようになりました。 ナンシーさんのヨーグルトが話題となった大きな理由にプロバイオティクスがあります。ナンシーさんのヨーグルト製法は、ライブカルチャーと呼ばれる生きた乳酸菌を使って、牛乳を時間をかけて熟成させて作ります。ライブカルチャーを使う事により、豊かな風味のあるヨーグルトが出来上がるだけでなく、増粘剤やゼラチンを使わずに、クリーミーな仕上がりになります。 これまでは、牛乳から作られたヨーグルトのみを販売していたのですが、消費者の需要に応じて、植物性のオートミルクを使ったヨーグルトを販売するようになりました。そのプレーンタイプのヨーグルトの原材料は以下の通りです。 ●オートミルク(オーツ麦と水) ●ソラマメタンパク質 ●タピオカ粉 ●ココナッツオイル ●寒天粉 ●クエン酸 ●乳酸菌... S.thermophilus, L. bulgaricu ●植物性のプロバイオティクス菌... B.bifidwn lactis, BB-12R, L.acidophilus, L.rhamnosus LGG 上記原材料を見てみると、植物性のヨーグルトを作る場合、植物性のミルクを固める(とろみをつける)為に、タピオカ粉と寒天を使っています。パッケージの表示に、NON GMOという、遺伝子組み換え不使用のラベルがあるので、安全性の高い品質と言えます。意識の高い消費者は、パッケージの裏側の原材料を読んでから、商品を購入するので、遺伝子組み換え不使用のラベルは、購買力の促進補助になります。 イギリスでは、植物性由来のミルク(オートミルク、アーモンド、豆乳、ココナッツの4種類から選択可能)を毎朝、各家庭に届ける牛乳配達が展開されます。昔と同じように、瓶を使い、取り外しの出来る、小さなカーボンにラベルを付けた地球環境に優しい配達です。瓶は、回収した後、消毒され再利用されます。 https://www.veganfoodandliving.com/news/a-vegan-milk-factory-will-soon-deliver-its-zero-waste-plant-milks-across-the-uk-in-an-electric-van/?fbclid=IwAR2_QcyeixWUwRByVVWTDFwshvU4rfuosCbbMcZhq_cSExXdnVu8EbwAk5o アメリカ人が植物性由来にしてまで、ヨーグルトを食べ続ける大きな理由として、健康の為に、プロバイオティクスを取り入れたいという思いがあります。プロバイオティクスは、腸に優しい微生物や乳酸菌などの事です。プロバイオティクスをキーワードにしたヨーグルト、ケフィアの売り上げは、過去3年間で、30%増えており、その市場は、370億円ドルとされています。実際、アメリカ現地のスーパーには、様々なプロバイオティクスを歌った商品が並んでいます。中でも、ヨーグルトは、かなりの割合を占めています。 https://www.womenshealthmag.com/jp/wellness/a64336/probiotics-20170630/ アメリカのサンタクルーズ市にあるオーガニックストア、ニューリーフで撮影した植物性由来のミルク、ヨーグルトの写真を添付します。通常の乳製品が、2/3弱、植物性由来の商品が1/3強のスペースで陳列されていました。フレーバーも、バニラ風味、無糖に分かれており、1回食べきりの小さなカップのヨーグルトは、いちご、ブルーベリー、バニラ等々、様々な種類のフレーバーのヨーグルトが陳列されていました。コーヒー用のクリームも、様々な種類の植物性由来のクリームが作られています。又、植物性由来のアイスクリーム、チーズも豊富に揃っています。 お店のスタッフに植物性由来のミルク製品の需要について聞いてみたところ、年々、需要は高まっているそうですが、通常の乳製品を根強く愛飲する人達も多くいらっしゃるそうです。また、お店自体が、オーガニックの食材を求めてくる消費者が殆どなので、通常のお店で取り扱われている製品の需要度とは、少し違ってくるとの指摘も受けました。 そこで、通常の食材を扱っているアメリカで全国的に展開している大手企業、Safeway社のお店も覗いてみました。すると、確かに、こちらのお店では、植物性由来のミルク製品は、全体の1/6~1/7スペースしかありませんでした。然し、多くの人達が、環境問題を考える昨今、今後も、プロバイオティクスをキーワードに植物性由来の代替ヨーグルトは、市場を拡大してくると思われます。 アメリカでの牛乳離れの一因として、現代の牛乳の生産方法に、大きな問題があると言われています。牛たちは、過密状態の牛舎に押し込まれて、本来食べるはずがない穀物飼料を与えられ、糞尿にまみれ、病気にかかりやすくなっています。そのため、常に抗生物質や抗菌剤などが投与されます。それらの薬品は、当然牛乳の中に混じります。また、効率よく搾乳するために乳牛を妊娠させ続けています。哺乳類は、妊娠中は胎児を守るためにエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンの値が高くなります。そのような牛乳を飲むことが果たして健康に良いのかという事が懸念されています。 その為、グラスフェッドの牛乳の需要が高まっています。穀類ではなく、牧草を食み、ストレスの無い状態で育てられた牛乳は、多くのβカロチンやオメガ3脂肪酸を含んでいて、香りも味も、通常の牛乳とは違うそうです。また、牛達も、牧草地で育つので、ストレスがありません。 https://www.instacart.com/landing?product_id=3378894&retailer_id=436®ion_id=9592692520&mrid=232068773&utm_medium=sem_shopping&utm_source=instacart_google&utm_campaign=ad_demand_shopping_food_ca_santacruz_newengen&utm_content=accountid-8145171519_campaignid-2068020875_adgroupid-77499255038_device-c&gclid=EAIaIQobChMIvNOkl-nf5wIVicpkCh1LngWVEAQYASABEgLbofD_BwE もう1つ、需要のある牛乳として、ラクトスフリーの牛乳があります。アメリカ人に限らず、多くの人達が、乳糖不耐症であると言われています。乳糖を分解する酵素が無いので、消化不良を起こしたり、下痢などの症状が起きます。その為、牛乳をフィルターして、乳糖を減らし、ラクターゼ酵素を添加して、残りの乳糖を体が吸収出来るレベルの小さい形に分解します。 https://www.target.com/p/horizon-organic-lactose-free-2-milk-0-5gal/-/A-14936451?ref=tgt_adv_XS000000&AFID=google_pla_df&fndsrc=tgtao&CPNG=PLA_Grocery%2BShopping_Local&adgroup=SC_Grocery&LID=700000001170770pgs&network=g&device=c&location=9032160&ds_rl=1246978&ds_rl=1247077&ds_rl=1246978&gclid=EAIaIQobChMIhtv-uejf5wIVDdNkCh1a5goNEAYYAiABEgIxKPD_BwE&gclsrc=aw.ds 残念ながら、牛乳の需要は伸びていません。然し、調査会社のミンテルのレポートによると、フレーバーミルクと呼ばれる、牛乳の味や栄養をそのままに、香りをつけた新しいタイプの乳飲料の売り上げは、伸び続けています。フレーバーミルクは過去5年間で乳製品カテゴリーで最も急成長しているセグメントです。2012年から18%増加、売上高は2017年に17億4,000万ドルに達し、2022年までに21%成長し続けると予測されているため、今後数年で減速することはありません。この成長の背景には、5人の消費者の内2人(40%)が、お気に入りのフレーバーを、前年度よりも多く購入した事が要因です。更に、10人の消費者(通常の牛乳と植物性由来のミルクの両方を消費者する人達)の内1人(11%)は、今後も新しいフレーバーミルクを買うと同意しています。 https://www.mintel.com/press-centre/food-and-drink/us-non-dairy-milk-sales-grow-61-over-the-last-five-years https://www.amazon.com/Milk-Magic-Flavoring-Straws-Bundle/dp/B01H5UDJE6/ref=pd_sbs_121_t_0/139-2189124-9974535?_encoding=UTF8&pd_rd_i=B01H5UDJE6&pd_rd_r=5cf014a6-3bf7-4386-a8ff-bb9ccba161f4&pd_rd_w=PeFhV&pd_rd_wg=ZsUCU&pf_rd_p=5cfcfe89-300f-47d2-b1ad-a4e27203a02a&pf_rd_r=2CSXA4PYV4RCNHBG66QM&psc=1&refRID=2CSXA4PYV4RCNHBG66QM 最後に、ヘルシー料理家としての提案 日本人は、プロバイオティクスという言葉が出てくる前から、プロバイオティクスを含んだ食べ物を常食してきました。味噌、醤油、納豆、漬物、梅干し、甘酒等々。本来、こういった食材を日頃食べていれば、プロバイオティクスのサプリメントを飲む必要はありません。日本人の体には、ヨーグルトより、甘酒の方が体に合っているのではないでしょうか? 私は、お米と麹でクリーミーな甘酒を作ります。その甘酒の中に、いちごを入れて、発酵させると、苺甘酒が出来るのですが、程よい酸味と甘酒の発酵の風味が混じり合い、苺ヨーグルトのようになります。また、砂糖を加えなくても、麹菌が、米のデンプン質を分解して甘いブドウ糖に変えてくれるので、とても体に優しい甘みが加わります。日本人の体に合う、甘酒を進化させた甘酒ヨーグルトの開発をお勧めします。美肌効果も期待出来るので、女性から小さなお子様、そして年齢層の高い方まで安心して喜んで頂けると思います。 https://wanowa.weebly.com/alternative-medicine/amazake-miracle-food-from-japan https://wanowa.weebly.com/alternative-medicine/amazake-recipe-healthiest-sugar-substitute
0 Comments
Leave a Reply. |
Shinobeauヘルシー料理研究家 Archives
January 2024
Categories |